過去試合を振り返ろう4 バルセロナ創立100周年記念試合 バルセロナvsブラジル代表 前編
1999年に行われたクラブチーム対代表チームという珍しい試合。
この頃、海外サッカーに目覚め始めた僕は、ボールポゼッションからサイドアタックを繰り返すバルセロナに胸キュンしており、この試合も見たかったのだが、当時はどうしても見れず。
20年たって、ようやく見ることができました。
結局、この年にバロンドールを取ることになるリバウドが大エースで、本当はリバウドのいるバルセロナvsリバウドのいるブラジル代表を見たかったところ。
ちなみにですが、僕がレプリカユニフォームを初めて買ったのは、このバルセロナの100周年記念ユニフォームで、ネームはリバウドでした。
色々と書きたいことがあるので、前編/後編に分けます。
まずは前編・バルセロナについて
1.ボールポゼッションの仕方
リスクマネジメント/カウンター対策の名のもとに、中盤を放棄し、前線3枚(2トップ+トップ下)の個の力/ファンタジーに頼るイタリア式のサッカーばかりだったフランスW杯に正直、喜びを感じられなかった僕は、その後に見せられたファン・ハールのバルセロナに魅了されることになる。
ウィングのいる3トップという珍しいフォーメーション。そこにパスを送るべく、しっかりとボールを回し、そのためにDFの数を減らし、中盤の数を増やすという。
いやぁ、もうね。僕の理想のサッカーそのものだったんですよ。
なんで中盤でこっちの数が多いのにポゼッションを放棄してロングボール出すんだ、とか、真ん中、人一杯ならサイド出りゃいいじゃん、とか。
それ以来、僕はバルセロナの虜になっているわけだけど、今のポゼッションの仕方とは随分違うなぁ。
それはウィングの使い方。
ペップが最たる例なのだが、彼の戦術では、ウィングをサイドライン目いっぱいまで広げて、相手ディフェンスを横に広げるという狙いを持たしている。
いい具合にボールが入って、サイドバックもタイミングよく上がれて数的優位になったら当然そのままアタックするわけだが、そうでない時はあっさりとボールを戻したりする。相手を横に広げるという主目的は達成しているためだ。
つまるところ、外を見せておいて、一番やりたいのは中央突破になる。
一方、この当時のバルセロナは、ポストプレーの得意なクライフェルトがいたというのもあるが(というか、それをしたがためにクライフェルトを獲ったというべきか)、中央付近でクサビのボールも使いつつポゼッションしておいて、よりウィングが優位な状況を作って、そこにボールを送るというのを基本姿勢としていた。
中を見せておいて、本命は外、というわけだ。
ちなみに、時代の流れ的には、この後、サイドアタックが復権するわけだが、サイドから攻めたいばっかりに外しか選択肢がないチームが多くて、まずは中見せなきゃダメだよー、と強く思ったものである。
エスパルスですけどね。長谷川健太率いたエスパルスですけどね。
この試合は、右フィーゴ、左ゼンデンだったのだが、ボールが入ると彼らは高確率で相手サイドバックに突っかかるドリブルを見せていた。
これは今のバルセロナ、バルセロナを手本としているポゼッションチームにはあまり見られない傾向だ。
中盤までは細に穿ったポゼッションをしているくせに、最終段階に入ると途端に攻めが強引になるとも言える。
が、これまた、僕の理想に近しい。
だって、相手ゴールに近づけば当然相手のほうが多いわけだし、そりゃもうイチかバチかで攻め込むしかないでしょうに。
ただし、この方法、1つ弱点がある。
1vs1で勝てるウィンガーが必要ということ。
例えば、この試合、リバウドが相手チームにいってしまったせいで、せっかく作った局地戦でゼンデンが勝てず、ポゼッション率がチャンスに繋がらないという事態になってしまっていた。
実際、翌年からバルセロナが勝ちきれなくなるのだが、それはフィーゴが移籍してしまい、リバウドは中央でのプレーが多くなり、オーフェルマルスはいたものの短期の活躍でしかなく、バルセロナの強みを勝利へと変換できるウィンガーが不足したことが原因となる。
2.ルイス・フィーゴのドリブル
ゼンデンがイマイチだったのと、相手がロベルト・カルロスだったので余計にそう見えてしまうんだけれど、フィーゴの圧倒的な突破力。
改めて見ると、何なんだろうね、あのドリブル。
別段速いわけでもない。
超絶フェイントがあるわけでもない。
それでも抜いていける。
以前、解説をしていた金子達仁さんが、「緩急が上手い。特に、緩。歩くところまでスピードを落とし、そこから上げて緩急の差を大きくするから、足の速くないフィーゴでも抜いていける」と評していた。
うん、まぁ、そういうのもあるんだろうな。
ちなみにですが、その話を聞いてたから僕もフットサルで真似して、わざと歩いてからスピードアップしたりしていますが、そのやり方で抜けた試しがありません(爆)。
結果的に相手を突破しているんだけれど、カテゴライズすると「抜く」ドリブルじゃなくて、「運ぶ」ドリブルに秀でてるってことなんじゃないのかな。
相手の立ち位置・重心、ポジションなどを見極めて、効果的な方向でドリブルを運んでいく。
イニエスタも同種の抜き方なんだけど、より1vs1に特化しているというか。
3.守備陣形
3バックだったので余計そう見えるだけかもしれないが。
ああ、いや、4-3-3だったとしても、ファン・ハール曰く、「あれは2-3-2-3だ」などと宣うぐらいだから、最終ラインの数の少なさは一緒か。
「自分たちが主導権を握って試合を動かすことを前提にしているような守備陣形」と解説が評していたが、まさにその通り。
サイドスカスカ、ペップ自身のフィルター能力も低く、真正面から相手の攻撃に晒される最終ライン。
そして、その最終ラインのカオスっぷり。個々の判断だけで、チャレンジとカバーをしているもんだから連携もまるでなく。
近年ではあまり見ることのないレベルで3バックが凸凹し、ポゼッションのおかげで攻められる割合が極端に少ないはずなのに、作られる決定的チャンスが異常に多いという。
こういうのも素敵です。
この脆さ、儚さがノスタルジー。
この崩壊したディフェンスラインを強固にしたのは、数年後。
プジョルのラインコントロール技術だと思う。
ポゼッションで押し込んで、取られた後も近い選手がプレスをかけることでボールホルダーにプレッシャーを与えている間に、プジョルの強気なライン押上げで、裏はオフサイドで殺し、最終ライン前のスペースも押しつぶすという。
4.カンテラーノたち
バルサは、トップチームから下部までフィロソフィーが浸透しているから、ハマればトップチームで大活躍する選手が出てくる。
ただし、あまりに意固地な戦術を学ばされるので、トップチームデビューできず、もしくは定着できなかった選手が外に出てもそれほど活躍はしない。
例えばバルトラ(ドルトムントでそこそこだったのに、結局、大成しなかった。爆破事件のせいもあるだろうけれど)、オレゲル、ボージャン、ムニエサ、クロッサス、クエンカ、セルジ・サンペール。
一方マドリーは、トップチームのレベルを上げるほどの大活躍する選手は少ないが(例外は、ラウールとグティ)、外に出ても、そのチームの主力となった活躍する選手も多い(例えば、カジェホン)。
活躍して、呼び戻される選手もいる(例えば、カルバハル)。
要するに、潰しが効く。
そんなイメージを持っているんだけど、この試合にベンチにいたのは、ロジェールとセラーデス。
うん、めっちゃ素敵じゃん。
残念ながらバルサには残れなかったけれど、他チームでも主力として活躍した2人。
ロジェールはビジャレアルだったっけ。
1シーズンで2度センターサークル内からぶちこむ、っていう年もあったし。
セラーデスは、セルタで活躍して、マドリーに引き抜かれるまでになるし。
近年、トップチームに定着する選手が少ないバルサカンテラだけど、控え組の顔触れ見ても、当時のほうに軍配が上がってしまうのかな、と感じました。